【少年野球審判講座】(第6回)「塁審での判定の基本・その1」
必ず止まって判定する
前回は球審での基本的事項や判定のコツなどについて書きましたが、今回は塁審です。
これはすでにYouTubeでの動画でも紹介済みで、やや重複する点もありますが、文章としても記憶にとどめてもらえたならば幸甚です。
まずは打球判定の大原則です。
絶対に走ったままの状態で見ないこと。
必ず止まってください。
頭が動いている状態では目から入った情報が正しく脳に伝わりません。
カメラを動かしたままシャッターを押せば画像がぶれるのと同じことです。
プロの審判でも「えっ?」と思うような間違いを犯すのは99%、これが原因です。
距離よりも角度が重要
そして大切なのは距離よりも角度。
正面から見ればグラブと打球は一直線になり重なります。
少しでも角度をつければ斜めからの視点となり、見やすいのです。
打球へは真っ直ぐに追わずに、やや斜めに走りましょう。
そして確実に捕球したか否かの確認。
グラブに入った瞬間が捕球ではありません。
捕球とは「手またはグラブでしっかりと受け止め、かつそれを勝実につかむ行為」(定義15)です。
よって野手が転げまわった勢いで打球がグラブから転げ落ちたり、送球を焦るあまりグラブから取り出す時に落としたならば落球となります。
しかし送球動作に入っていたならば捕球です。
慌てずに一呼吸置いてからの判定を心がけてください。
ひとつ勘違いしやすいのはタッグアップのケース。
走者は野手が飛球に触れた瞬間に走り出してOKなのです。
捕球の瞬間ではありません。
ジャッグルしたり、弾いた飛球を他の野手が捕球した場合などに気をつけてください。
フォースプレーの見方
さて、次にフォースプレーの見方です。
一番多いのは1塁ですが、基本的には野手からの送球に対して90度の角度をつけること。
そして見る位置は塁から5~7メートル、と覚えてください。
送球がなされたならば早めに目を切り、その塁に集中すること。
見るのは打者走者の足が7割で、送球は視界の右上部3割で大丈夫。
足が塁に着地した瞬間に送球はどうだったか?
それ以前に捕球が見えればもちろんアウトですし、足が踏み込んだ瞬間に送球が届いていなければセーフです。
肝心なのは送球をずっと目で追わないこと。
初心者のほとんどはボールから目を離してはいけないと思うあまり、送球ばかりに集中してしまいます。
すると送球の印象ばかりが強く目の中に残り、明らかなセーフでもアウトとコールしてしまうのです。
タッグプレーも同様
これはタッグプレーでも同じこと。
送球を見過ぎないことが肝心です。
そして送球がそれた場合、早めに察知できたならば最適のポジションを見つけに行ってください。
ほとんどがタッグプレーになりますので、ライン上から見る、あるいは本塁側に切り込む、どちらでもOKです。
その反応が遅れたならば、もう動かずにその場で見るのもありです。
なまじ動いて死角に入ってしまうこともよくあるからです。
こればかりはプレーの質にもよりますので、適宜に使い分けてください。
もめるケース
1塁でよくもめるが悪送球になった時の打者走者の進塁の動きです。
2塁へ行こうとしたのか、すぐに帰塁しようとする動きか、それは審判の判断となります。
ラインの内側か外側かといった位置は全く無関係です。
ひとつの目安として、一歩でも足が2塁方向へ向いたならばそれは進塁の意思があり、1・2塁間に居る状態とみなします。
よってタッグされれば打者走者はアウトです。
1塁審判は悪送球の行き先もさることながら、この動きもよく見てください。
次回はタッグプレーの見方やボーク・悪送球になった時の走者の進塁の指示などについて説明いたします。
1955年7月2日、新潟県上越市生まれ。幼少期から野球が大好きで、プロ野球選手を目指すも、実力を悟り断念。79年に北海道大学文学部国文科卒業後は、プロ野球担当記者になろうと、日刊スポーツ新聞社に入社。しかし、野球現場への夢を諦めきれずに一転、同社を退社して82年にパシフィック野球連盟と審判員契約を締結する。84年、一軍戦に右翼線審として初出場(西武対南海)。同年に、Jr・オールスター戦に出場(以後3年連続出場)すると、86年イースタン・リーグ優秀審判員賞受賞した。88年、一軍戦で初球審(ロッテ対南海)すると翌年、一軍戦レギュラーメンバーに昇格。フロリダのジム・エバンス審判学校(フロリダ)への派遣留学、オールスター戦出場などの経験を積み、99年7月に一軍公式戦1000試合出場達成。10年10月に千葉マリンスタジアム最終戦(ロッテ対オリックス)で現役引退するまでに、一軍公式戦1451試合に出場した。その間、歴代1位、計17回の退場宣告を行った審判として知られる。引退後は日本野球機構(NPB)と審判技術指導員として契約。18年に同機構を退職し、現在は「審判応援団長」として審判の権威向上と健全なる野球発展のために講演・執筆活動を行っている。
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